「 もうちょっとで紫が・・・・って
どうした?どっか痛むか? 」
「 ・・・・~~~ッッ 」
この家に来て、4日目の朝。
手当てされた傷を眺めて
改めて”何故”あの日だったか
分かってしまった。
「 ・・・・お前・・ 」
何も言わずに泣きじゃくる
あたしを強く抱きしめてくれる。
名前しか知らないのに
傷が痛まないように優しく
でも強く抱きしめてくれた。
「 大丈夫か? 」
彼の胸に顔を埋めて
声が漏れないように
唇を強く噛んだ。
頭を優しく撫でながら
たまに体の心配をしてくれる。
「 ・・・痛い? 」
ふるふると首を横に振ると
彼は再びあたしを強く抱きしめた。
──────ガチャッ
「 あら、お邪魔しちゃった? 」
「 麗華、手当てしてもらえよ 」
「 ・・・うん 」
顔を上げると、心配そうな
顔であたしを見た彼が
パッと目を逸らして
「 変態、ちょっと出てろ 」
「 いや~~!!麗華ちゃんが! 」
「 いいから出てろ 」
強制的に部屋から出された紫さんは
”コンビニ行ってくるわ!”と
家からも出て行った。
「 ・・・・声は殺すもんじゃねーよ 」
少しずつ顔を近づけて
あたしの唇を舐める。
「 血、出てる 」
と、何度も拭うように
キスをされる。
「 ・・・・んっ・・・ふ・・・っ 」
「 止まった 」
血が止まると、彼は体を離して
ガチャリと部屋のドアを開ける。
「 変態呼んでくる 」
今日それ聞くの・・・2回目・・・。
彼が部屋をでていってすぐ
ドアを開けて入ってきた紫さんは
何故か嬉しそうだった。
「 唇・・・赤いわねっ!! 」
あたしの顔を見るなり
ほんのり頬を赤く染めて
にっこり微笑む。
「 今度詳しく聞かせてね♪ 」
そう言いながら、あたしの腕や
肩の傷に触れ、手当てをしていく。
「 痛いところは? 」
「 これといっては・・・ないような・・ 」
「 そう?よし!じゃあ、傷が消えるまでは
包帯巻いておこうか! 」
「 はい! 」
・・・・傷、かぁ。
ガラス・・・とかで切った所かな?
・・・顔、どうなってるんだろう・・・
「 来週、外に行かない? 」
「 え? 」
ずいっと顔を近づけた紫さんは
”傷、その頃には薄くなってるしさ!”
と あたしの手を握る。
「 どう?ここら辺、案内するよ? 」
「 いいんですか・・? 」
ここが何処かも分からないあたし。
彼が、紫さんが、どんな人かも
何も知らないあたしなのに?
──────────他人、なのに?
「 いいのよ!麗華ちゃんは
あたしの妹だから!! 」
「 ・・・ありがとうございます 」
紫さんが救急箱を片手に
部屋を出て行くと
バタバタと廊下を走る音と共に
壊れそうな勢いで開いたドア。
「 何もされなかったか? 」
そのままの勢いで閉まったドア。
いつもより声が低い龍弥さん。
「 あの・・龍弥さ・・・・ 」
「 傷は!? 」
遮るように話す彼の
眉間にはシワがよっていた。
「 来週には・・薄くなるって 」
「 救急箱は? 」
「 紫さんが・・・ 」
「 アイツ・・シメてやる 」
物凄い不機嫌オーラを出した彼は
あたしに背を向ける。
ポケットから携帯を出して
片手で器用に操作する姿を見て
思い出した。
「 ・・・あの・・ 」
・・・・あたし、携帯片手に
家を飛び出して来た気がする。
「 どうした? 」
「 あたしの、携帯って・・・ 」
「 ・・・携帯? 」
不思議そうに首を傾げた後、
「 あ!アレか! 」
独り言のように呟いて
”アレ”を取りに部屋を出て行くと
開けっ放しのドアから
すぐに彼は戻って来た。
「 コレ? 」
見覚えのある、ピンクの携帯。
「 はい!それです! 」
「 壊れてねぇ? 」
携帯を開いて、少し操作してみると
・・・いつもと変わらない。