「 痛みは? 」
「 ないです 」
「 じゃ、これでいいな 」
あたしの体に白衣を被せると
後片付けを始める。
「 ・・・・ 」
手際、いいな・・・
包帯巻くのもうまいし。
後片付けもすぐ終わっちゃうし・・・
「 ・・・ん、なんだよ? 」
気付けば、あたしは彼を目で追っていたようで
不思議そうに首を傾げる彼が
ずいっとあたしの顔を覗き込んだ。
「 やっぱり紫さんと・・・ 」
「 変な想像してんなよ? 」
眉間にシワを寄せると
あたしの頭を小突く。
「 だって・・・・ 」
「 包帯はアイツが持ってくるし
仲間がよくやられるから
俺がやってるだけ 」
弁解するように説明するけど
あたしには分からないことだらけで
彼が一体何者なのかは分からないけど
・・・・仲間、いるんだ。
「 お前のハジメテ、俺がもらう 」
──────ガチャンッ
「 ・・・・ん 」
ガラスが割れるような
大きな音で、目が覚めた。
朦朧とする意識と
はっきりしない視界の中で
彼が割れたグラスを片付けていた。
「 ・・・・ッッてぇ 」
指を切ったのか、血が滲んだ手を
嫌味たっぷりの目で見て
大きな舌打ち。
「 指、大丈夫? 」
不意に口から出た言葉だった。
「 ・・・・起きたのか 」
「 ん・・・手当て・・を・・ 」
・ ・ ・ 。
「 俺、服まだ着せてないからな 」
────────早く言ってよ!!!!!!
立ち上がった体から落ちる
”白衣”。
・・・・もちろん下着姿なあたしは
白衣を素早く拾い上げて羽織った。
「 体、痛くねぇ? 」
「 前よりは・・大丈夫です 」
「 ・・・だろうな 」
・・・・?
何で当たり前って顔をするの?
「 あの・・? 」
「 お前、3日間起きなかった 」
3日間?
・・・3日間・・・・!?
「 えぇぇぇえええっっ!? 」
「 顔色もよくなったし
声も治ったんだな 」
あたしの頭を優しく撫でると
”紫呼んでくる”と携帯を片手に
部屋を出て行った。
「 ・・・・・・3日 」
ってことは・・・・今日は、
2月18日?
──────────・・やだな。
「 もうちょっとで紫が・・・・って
どうした?どっか痛むか? 」
「 ・・・・~~~ッッ 」
この家に来て、4日目の朝。
手当てされた傷を眺めて
改めて”何故”あの日だったか
分かってしまった。
「 ・・・・お前・・ 」
何も言わずに泣きじゃくる
あたしを強く抱きしめてくれる。
名前しか知らないのに
傷が痛まないように優しく
でも強く抱きしめてくれた。
「 大丈夫か? 」
彼の胸に顔を埋めて
声が漏れないように
唇を強く噛んだ。
頭を優しく撫でながら
たまに体の心配をしてくれる。
「 ・・・痛い? 」
ふるふると首を横に振ると
彼は再びあたしを強く抱きしめた。
──────ガチャッ
「 あら、お邪魔しちゃった? 」