「 あたしは、生きていていいの? 」
─────あたしが、何をしたって言うの?
「 お前がッ・・生まれてこなきゃ・・ッ
真衣は死ななかったんだ! 」
「 やめっ・・・ッッ 」
繰り返される暴力。
怒り狂う父親。
写真の中で笑う母親。
そう。
母はもう、17年も前に
あたしを抱くことなく
亡くなってしまった。
あたしが、生まれたから。
体が弱かったのに
無理してあたしを産んだから。
「 お前なんかっ・・・!!!! 」
気付いたら、
大きな花瓶が目の前に飛んできていた。
────────ガシャンッ
壁に当たって割れた破片が
あたしの足や腕へ飛んで来て
傷を刻み付けていく。
「 ・・・っくそ! 」
お酒を飲むと手をつけられない。
───────・・家を出たい。
ただその一心で、家を飛び出した。
慌てて追って来た父は、
あたしが何処に行くかなんて
分かりきっていたんだと思う。
「 やだっ・・・! 」
尚も続く ”親子喧嘩”。
腕を引っ張る父に抵抗して
腕をブンブン振り回した。
「 ・・・・言うこと聞け! 」
振り返った父の拳が振り上げられて
あたしの頬に的中した。
ゴンッと鈍い音が響き渡る中
倒れこんだあたしの襟を掴んで
これでもかと言うくらい殴りつける。
「 お前がいなきゃよかったんだ 」
今までの記憶の中に
”母親”は当たり前のようにいない。
あたしの誕生日が、母の命日。
だから1度だって祝ってもらえなかった。
毎年くる誕生日は、地獄のようだった。
「 お前を殺して、俺も死ぬ! 」
狂い叫ぶ父を見て、
”もうだめだ”と思った。
この人の目は もうあたしを見てはいない。
あたしが生まれたその瞬間から
この人はもう 死んだ人みたいだった。
もう、だめだ。
母を殺したんだから
こんなことは当たり前。
17年の人生だって
短いものではなかった。
「 ・・・・うぁあっ! 」
血まみれのあたしは、
他人の目にどう見えるんだろう。
声もでない、息も苦しい。
頭が痛い。
意識が朦朧としてきたとき、
”留め”と言わんばかりに
胸倉を掴んだ父は 今までより
勢いよく 拳を振りかざした。
スローモーションのように
振り下ろされる拳。
目を瞑ることも忘れたあたしは
・・・・大きな手を見た。
「 何してんだ 」
「 他人は引っ込め! 」
「 殺す気か 」
「 だったら何だってんだ! 」
目の前で止まった拳。
握られた父の拳は
大きな手に包み込まれて
あたしの目の前で手の主が
狂った父を止めている。