「 彼と一緒じゃないの? 」
「 ・・・退いてよ 」
「 感動の再会をぶち壊すなよ 」
「 感動?笑わせないで・・ 」
感動なんかしてないくせに。
あたしを追いやったのは
自分のくせに・・・・・!!!!
「 未成年がこんな時間に
ウロチョロしちゃだめだなぁ 」
「 駅員呼ぶよ・・・? 」
「 呼べよ。親子が話してるだけだろ? 」
「 ・・・・親じゃないでしょ!? 」
自分でも驚くような声が出た。
どうして、こんな時間に
こんな所にいるの?
どうして 父が?
「 傷つくな、その言い方は 」
少しイラついた口調の父を
避けて ホームへ足を向けた。
このままじゃ、腕を掴まれて
また連れ戻される・・・・
それだけは避けなきゃいけない。
「 数ヶ月前は俺の声を聞くだけで
泣いて怯えたそうじゃないか 」
「 ・・・・っ 」
「 三浦がボロボロになっててなぁ・・・
お前、どんな彼氏を作ったんだ? 」
・・・・三浦さんが来た日。
全身の震えが止まらなくて
父に怯えたあたしを
龍弥は抱きしめてくれた。
龍弥が守ってくれた。
龍弥が助けてくれた。
『大丈夫だから』って。
「 尻軽女になったんだなぁ・・ 」
いつの間にかあたしのすぐ後ろまで
近付いていた父は耳元で
”龍弥くんだっけ?”と
楽しそうに話を続ける。
「 もう、やめてよ・・・ 」
「 何を?お父さんが娘に
付き合う男は選べと
教育をしているだけだぞ? 」
「 ・・・近寄らないで!!!
あたしに関わらないで! 」
無意識に走り出して
閉じかけたドアの隙間に駆け込んで
初めて”駆け込み乗車”をした。
「 ・・・っはぁ 」
窓の外で 悔しそうに顔を歪めた父は
あたしから目を逸らさなかった。
「 麗華ちゃん? 」
・・・この、声は・・・
「 ダーリンは一緒じゃないの? 」
「 ・・・・・・っ 」
「 ・・麗華ちゃん・・・・? 」
紫さん・・・・
「 どうしたの?何かあったの? 」
「 紫さっ・・・・あたし・・あたしっ・・ 」
「 落ち着いて。何処まで行くの? 」
持っていた切符を見せると
驚いた顔をした紫さんは
あたしの手を握って
イスへ座らせた。
「 ・・・あたしも、遠出するの 」
「 ・・・ 」
「 最近はすごく調子良さそうだし
龍からも連絡はないけど、
麗華ちゃんとうまくいってるんだと
・・・思ってたんだけどな・・ 」
白衣は着ていないものの
すごくキッチリした服装の紫さん。
持ってる鞄から 仕事に行くんだと思った。
「 出てきたこと、龍は知ってるの? 」
「 ・・・いえ・・ 」
「 そう・・・どうして、出てきたの? 」
「 ・・・あたしが、彼の重荷だから・・ 」
ちっぽけな悩みだったことが
今ではこんなに大きく、
あたしの背中に乗っかっていて
重みを増した荷物を
龍弥が全て持っていった。
あたしはこんなに軽くなって
動けるようにもなったのに
彼はもう、疲れきっている。
「 あたしが、いなきゃよかった・・のに 」
「 ご家族か何かかしら? 」
「 ・・・・・ッ! 」
いとも簡単に当ててしまう紫さんに
動揺してしまう。
「 詳しい話・・・聞かせてもらえる? 」
あたしは小さく頷くと、
今まであったことを話した。
──────────家を出てきた理由と共に。
「 ・・そう・・・大変だったのね 」
話し終えたと同時に
終点の駅についた。
紫さんはあたしの手を掴んで
駅から出ると、薄暗い路地へ入った。
「 麗華ちゃん、これからどうするの? 」
紫さんは路地の奥へ奥へと
少し足早に進んでいく。
「 ・・・・何も、考えてません 」
「 じゃあ、あたしと考えようか 」
「 え・・・? 」
立ち止まった目の前には
大人の雰囲気を漂わせるバー。
「 奥、いいかしら? 」
扉を開けるなり慣れたように
店員さんに”いつもの所”と
告げて 奥の個室へ入る。
「 麗華ちゃんお酒だめだから
オレンジジュースでいい? 」
あたしが首を縦に振ると
紫さんは席を離れて
カウンターの方へ行った。
・・・・バーなんて初めてだけど
紫さんは慣れてるみたい・・・
「 あたしの奢りね♪ 」
「 えっ!? 」
「 いいのよ。ここお得意さんだし 」
「 お得意さん? 」
ジュースにしか見えない綺麗な色の
お酒をおいしそうに口に含んで
少し頬を赤らめた紫さんは
・・・・い、色っぽい・・・・・。
「 ジュース・・ありがとうございます 」
「 ここね、よく治療しに来るの 」
「 え? 」
「 ・・・龍をよく思ってない人が
たまに暴れに来るの 」
───────予想外だった。
龍弥は確かに、すごく強いチームの
トップで・・・喧嘩が多い。
けど、こんな遠いところにまで・・・
「 だから、多分今日も来るわよ? 」
「 ・・・・え? 」
───────ガシャンッッ