「 ・・・消毒はこれくらいかな 」
ジンジン沁みてくる液体。
ジワジワと増してくる痛み。
「 痛いでしょう?傷が深いから尚更・・・ 」
包帯を丁寧に巻いて
優しく手当てをした後、
女の人はニコッと笑って
「 闇医者もどきの鈴木紫。
よろしくね 」
と、自己紹介をしてくれた。
鈴木紫[スズキ ユカリ]さん。
闇医者もどき・・・?
「 龍!いいわよ~ 」
裸のあたしに 白衣を被せると
”彼”を呼んだ。
ゆっくり開いたドアから
飲み物を持った彼が入ってきて
あたしを凝視した。
「 何でちゃんと着せねーんだよ 」
と舌打ちをして
乱暴に飲み物を置くと
紫さんに詰め寄った。
「 変な声聞こえたんだけど? 」
「 ・・・さぁ? 」
「 この変態!何もすんなっつったろ?! 」
痴話喧嘩のようなものが始まって
あたしは2人に釘付けだった。
「 無事か! 」
「 ・・・はい 」
掠れた声で答えると
ほっとしたように肩を下げて
彼は飲み物を3本持つと
”どれがいい?”と首を傾げてきた。
「 どれもお酒じゃないの! 」
バコッ
彼の頭にクッションが命中した。
・・・確かにどれも”チューハイ”って
書いてある。
「 こんな可愛い子に飲ませるなんて! 」
「 うるせーよ変態!帰れ! 」
そしてまた始まった痴話喧嘩。
「 水しかないんだけど・・ 」
あたしにストローを向けて
”飲める?”と心配そうに
聞いてくる紫さん。
「 ん・・・あの 」
潤った喉から、まだ掠れ気味だけど
少し声が出るようになった。
「 なぁに? 」
「 お二人は、付き合ってるんですか? 」
・・・・・・・
あれ?
長い沈黙を破ったのは
彼だった。
「 ありえねぇ! 」
吐き気がする!と騒ぎ出した彼は
あたしが飲んでいた水を一気飲みして
”あ~生き返る!”と大きく息を吐いた。
「 ところで、貴方の名前は? 」
「 ・・・神崎麗華[カンザキ レイカ]です 」
「 米原龍弥[マイハラ リュウヤ] 」
「 アンタには聞いてないわよ 」
「 お前に言ってねーよ 」
3度目の喧嘩が始まると
紫さんが息を整えながら
あたしの耳元でボソッと呟く。
『 襲われないでね 』
カッと顔が熱くなった気がして
”大丈夫です”と言うと
ニコッと笑った紫さんは
帰っていった。
「 体、痛くないか? 」
「 ・・・痛いです 」
「 服、着れねーよな・・・ 」
・・・・服?
あたし・・・・
「 えっ!? 」
自分の格好に驚いた。
下着の上にかけられた白衣。
少し透けてるし、
太腿とかでてるし・・・
何これ!??!??
「 くそ女・・・ 」
チッと舌打ちをすると
携帯を耳に当てて
”このくそ女!”と
叫んで切っていた。
すごい行動力だな・・・。
「 俺、あっちにいるから・・・ 」
「 ・・・はい 」
”何かあったら呼べ”と
ドアノブに手をかけたとき、
彼の携帯が鳴った。
「 ぁあ? 」
「 嘘だろ!? 」
「 このくそ女! 」
多分、紫さんだ。
彼は携帯を切ると
寝転んだままのあたしの
目の前に座り込んだ。
・・・・出て行かないの?
「 お前、熱だすかもだから
ここにいろって言われた 」
彼の耳が真っ赤になっていて
思わず笑ってしまう。
「 何、笑って・・・ 」
痛む体を忘れて笑っていると
近付いてくる彼の顔。
チュッと触れるだけのキスをすると
至近距離で目が合う。
「 悪ぃ・・・ 」
目を逸らして謝ると
彼はあたしに背を向けた。