「 麗華、早く 」
”早く”って・・・・
なんで こんな所に!?
ってゆうか・・夜じゃなくても・・・
「 怖がりなんだな 」
女の子だよ!
一応女の子!
「 ほら、早く! 」
その場から動かなくなった
あたしの手を掴むと
龍弥は ズンズン進んでいった。
─────もちろん、あたしも。
「 うひゃぁっ! 」
「 うるせーよ 」
「 だって・・・! 」
風で”ガサガサ”って
木が揺れるたびあたしは
立ち止まってしまう。
その度 龍弥は笑いながら
更に強い力であたしの手を引いた。
「 ・・・・・・わぁ! 」
お化け屋敷を抜けた気分。
目の前に広がる真っ暗な海。
月に照らされた砂浜みたいな所は
砂が光って見えた。
「 昼じゃ、こうはならねぇから 」
”夜しか来ねぇ”って
優しい顔をして教えてくれる。
「 あたしをココに連れてきてよかったの? 」
ココが、龍弥の1番好きな場所。
あたしだったら 誰にも知らさず
あたしだけの秘密にしたい。
「 お前だけ特別 」
「 え? 」
消えてしまいそうな小さな声。
でも 間違いなく ”特別”って・・・
「 麗華? 」
口を閉ざしたあたしの顔を覗き込んで
意地悪く笑った龍弥は
「 バカだな 」
小さく呟いて、目元、頬、
優しくキスをしてくれた。
家でも何度か交わしたキスは
その後何もなかったような
会話で かき消されてしまう。
「 ・・・んっ 」
けど、その会話すらない。
お互いの気持ちすら分からないのに
あたし達は自然と求め合って
何度もキスを交わした。
「 麗華? 」
「 うん? 」
「 何で、泣くんだよ? 」
右手で あたしの涙を拭って
・・・・・・そのまま唇へ。
「 ・・・・幸せ、だからかな 」
「 ・・・ 」
「 龍弥は? 」
腰に回された龍弥の手。
間近にある龍弥の顔は
暗いからそんなに見えない。
「 龍・・・ッん 」
深いキスに応えながら
”龍弥”と何度も呼んだ。
体が熱くて ふわふわする・・・
「 俺も 」
はっきりしない意識の中
耳元で 熱い吐息と
・・・・龍弥の声。
「 好き 」
自然と、口から零れた龍弥への気持ち。
・・・・17年間知らなかった気持ち。
これが、恋?
「 ・・・・龍弥? 」
ギュッとあたしを抱きしめたまま
何も言わない。
「 龍・・・・・「 バカか 」
あたしの声を遮って
・・・・・バカ・・・って
「 え? 」
思わず聞き返してしまう。
「 ココ、誰もいねぇんだぞ? 」
「 うん? 」
「 で、夜だぞ? 」
「 ・・・うん? 」
龍弥、何言ってるの?
「 お前、何言ってんだよ 」
「 ・・・・・・え? 」
・・・好きって、伝えるものじゃ・・ないの?
え?龍弥・・・何言ってるの?
「 俺がいつも、どんだけ我慢してると・・ 」
「 我慢? 」
いつも我慢してるの?
何を?
「 ・・・・知らねぇぞ 」
「 え?・・・・んぅっ 」
真剣な龍弥の顔。
さっき以上に激しいキス。
「 りゅっ・・・ぁっ 」
息・・・続かないよ
「 龍弥・・・? 」
荒い息を整えるように
深呼吸。
龍弥は頭を抱えて座り込んで
舌打ち。
「 お前、ほんとにバカだよ 」
「 ねぇ、龍弥 」
「 人の気も知らねぇで 」
「 龍弥 」
独り言なのか、俯いて
顔を上げない龍弥。
「 ねぇ・・・? 」
あたしも龍弥の前に座ると
俯いた龍弥の頬に手を添えて
あたしの方へ向ける。
「 あたしのこと、好き? 」
────────1秒でも早く、答えが聞きたい。