「 ・・・龍弥? 」
「 俺じゃねぇ 」
真剣だった彼の表情は
ムスッと膨れっ面になっていて
溜息をついたと思われる人物を探す。
「 あ 」
・・・・あ。
「 あたしの・・・タンス? 」
「 そう 」
「 え、何で? 」
適当に・・・持ってくるんじゃ・・・
「 タンス開けるなって
米原さんが・・・ 」
・・・・な、なるほど。
でも タンス丸ごとって・・・
「 タンスはそっちの部屋 」
「 ほーい 」
「 麗華、着替えて来い 」
最近分かった 彼の本性。
会ったときからの優しさと
・・・少し、俺様。
「 どうして? 」
もう、7時だよ?
「 傷も、治ったし
外行こう 」
「 え? 」
「 着替え、手伝ってやろうか? 」
ニヤリと笑った彼を見て
顔が熱くなったのを感じる。
振り向き際に”ばか”って言うと
彼は珍しく 満面の笑みで手を振ってくれた。
「 ・・・・溜息って・・ 」
海くん・・・だよね?
楓くんは相変わらずクールだけど・・
「 終わったか? 」
「 えっ・・え!? 」
下着姿のままなあたしは
ガチャリと開けられたドアから離れて
布団にくるまった。
「 ・・・ 」
「 ・・・えへ? 」
顔だけ出してみると
龍弥はあたしの布団に手をかけた。
───────満面の笑みで。
「 ちょっと待って!! 」
負けじとあたしも布団と掴んで
体を隠す。
「 何だよ?見せろよ 」
「 まだなの! 」
「 は? 」
「 まだ着てないの! 」
少し緩まった力に気付いて
あたしも力を緩めると
バババッと 目の前に広がった白い布。
「 ・・・・? 」
・・・・・・・こ、これって・・・
「 いい眺め♪ 」
布団とられた!!!!!!!!!
「 もう!出てって! 」
胸の前で両手を交差させて
足でドアを指すと
龍弥の手が 足を掴んで
「 俺に指図していいわけ? 」
と、ニヤリと笑った。
「 ・・・今日は、やけに笑うんだね 」
「 なんだよ?悪いか? 」
「 そうゆうわけじゃないけど・・・
海くん、溜息ついてたよ? 」
龍弥はあたしの足から手を離すと
ベッドに腰掛けて あたしに背を向ける。
「 ま、海にも色々あんだよ。
とりあえず服着ろ 」
・・・・・・うまく、はぐらかされた?
龍弥が部屋を出て行ってから
タンスを開けて
懐かしい自分の服を1枚ずつ
眺めていった。
「 ん~~~~~・・ 」
白じゃ・・・龍弥につりあわないし・・
黒だと・・・なんか違う気がする・・
派手なのは苦手だから持ってないし
露出が多い方がいいのかな・・・?!
「 龍弥! 」
「 なに? 」
多分 ドアの前で腕でも組んで
ダルそうにしてるであろう龍弥に
”白と黒、どっちが好き?”と
見えるわけもないのに ワンピースを
2枚引っ張り出した。
しばらく続いた沈黙の後、
「 わかんねぇな。
麗華なら何でも似合うだろ 」
・・・・・・!
「 とにかく、早くしろよ 」
時計を見ると・・・・8時。
既に1時間も服選びで
龍弥を待たせてる・・・・
って考えてる暇なんかない!
白にしちゃおう!
「 ぁあ?化粧すんの? 」
「 龍弥かっこいいし・・・ 」
「 関係ねーだろ 」
・・・・・少しは否定しようよ。
「 よしっできた♪ 」
「 先に出てる 」
結局2時間も待たせたあたしは
白いワンピースに髪を巻いて
いつもより少しだけ濃いメイクをして
龍弥が待つ 玄関に向った。
「 あ 」
・・・・・・ここ、家じゃない。
「 ・・・ 」
靴、ない!
パンプスもブーツも何もない!
「 靴なら海が持ってきたぞ 」
「 本当!? 」