どうして、またこの人と食事なんてしているんだろう。
我ながら信じられなかった。
アメリカ滞在が残すところその日の夜だけとなった時、
突然ぽかりと予定が空いてしまっていた。
鞄へのパッキングも終わってしまい、
残りの数時間をどうしようかと思った時、
彼からの電話が鳴った。
とはいえ、その電話をとった時、
彼が誰なのかさえ、だいぶ記憶から遠のいていたのだ。
最後に空港で別れた時から、一週間がたっていた。
たとえ一週間とはいえ、わたしには、あまりにもいろいろあった一週間だった。
「なんだか、先週あった時と雰囲気が違うね。」
会って、開口一番の彼の台詞だった。
「・・・どうして?」
「職業柄かな。どうしても、人をよく見てしまうんだ。何かあったの?」
あまりに、的を得た言葉に一瞬絶句した。
「ニューヨークに来てから、久しぶりの人達にで出逢って、いろいろ考えることがあって・・・。
よく人を見てるんですね。」
「・・・大丈夫?」
「・・・はい。踏ん切りがつきました。」
不思議と、素直な気持ちが自然と口から出た。
行きずりの人だから、どうとでも返事はできたはずだったけれど。
むしろ、行きずりの人だからこそ、言葉にできなかった気持ちを言えたのかもしれなかった。
もちろん、この人の人柄もあるんだろうけれど。