<夏歩SIDE>

 「夏歩ー!おはよッ」
月曜日,学校に着くなり親友の伊織が楽しそうに近づいてきた。
「おはよ。」
にっこりしながら返事をする。
「土曜日…どうだった?愛しのギターの先生は」
伊織に聞かれた途端,ギターの先生の姿がぱっと頭に浮かんできた。洒落れたベレー帽や,その下にある優しげな顔。想うだけで,こんなにも心が温かくなる。
「なんか進展でもあったの!?」
ギターの先生を思い出して顔をほころばせた私を見て,伊織がぱっと目を輝かせた。
「んー?あは,ごめん,ただの思い出し笑い!」
「あそー…まったく夏歩はあ…」
がっかりした様子の伊織に,私は堂々と宣言した。
「次の土曜日はがんばるよっ!」
伊織は,私をちらりと横目で見て軽く舌を出した。
「それ,先週も先々週も聞いたってば」
その言葉に,2人で笑う。