<準嗣SIDE>

 「へえ,あんま規模は変わんないもんなんだなー」
森さんの車から降りてK市の音楽教室を前にしながら,智浩さんが言った。
「たしかに」
俺もうなずくと,智浩さんが「おっ」という顔で俺を見て,まるで小さい子どもにでもするかのように俺の髪をくしゃくしゃにした。
「俺ら珍しく気合ったな!」
「あー,はいはいっ!そーっすね!」
智浩さんの手を振り払いながら俺が適当に答えるのを見て,森さんが笑った。
「本っ当トモと準嗣は仲いいよなー。俺も準嗣みたいな後輩が欲しいもんだわ」
「まあなー」
森さんについて音楽教室に入っていきながら智浩さんがさらりと答える。
俺が本当かよ,と言わんばかりに智浩さんを見ると, まるで悪魔のように性悪な笑顔を見せた。
まったくこの人は…。
思わず出るため息。