<夏歩SIDE>

 自分自身がいちばん驚いたことに,なんと私は時間通り,3時に教室に着くことができた。
「よかったあー…」
そう呟いて自転車をとめ,自動ドアをくぐって中へと入る。ピアノ用の個室教室は自動ドアのすぐ前にあるけれど,私の目はギター用の教室に吸い寄せられた。ギターの先生が姿を見せることを期待しながら―。
まさにその時,ギターの教室のドアが開いて先生が現れたのを見て,その瞬間私は神様の存在をちょっと信じたくなった。
先生は,誰かと楽しげに話をしながらこちらに向かって歩いてくる。
だれだろう―?
私は思わず,歩いてくるギターの先生と話す2人を目をこらしてじっと見つめた。