<準嗣SIDE>

 「よー,慎ちゃん!久しぶり!」
智浩さんがうれしそうに森さんと言葉を交わしている間に,俺はじっくりと森さんを観察した。
なんというか…いかにも智浩さんと仲がよさそうだ。普通の人とは,違う感じ―悪い意味ではなく,いい意味で。まあ,家の中にも関わらずベレー帽をかぶっている辺りはやや変人めいているが―似合っているからよしとしよう。
森さんは,軽くパーマのかかった長髪をひとつに束ね,彫りの深いくっきりとした顔立ちの人で,落ち着いた大人の雰囲気を醸し出していた。智浩さん同様,ギターを演奏する姿はさぞサマになるに違いない。
俺がそんなことを思っていると,森さんが智浩さん越しに俺を見てにこりとした。
「準嗣くん…だよね?初めまして。」
「あ…どうも初めまして。これから1週間お世話になります。」
俺は礼儀正しく挨拶をした。K市に滞在する間は森さんの家に泊めてもらうのだから―ちなみに森さんは独身だ―ちゃんとしておかないと。