「どうして…そんなに、優しいんだい……君は……」
そう告げた彼が私の首もとに顔を近づけた。
さらさらの髪が肌に触れてすこし、くすぐったい。
「少し…痛いのは我慢、してね…?」
「大丈夫だよ」
今、圭太はどんな表情をしてるんだろう?
顔はどうがんばったって、見えない。
だから、どうか泣いていないで欲しい、そう思った。
「ありがとう……ごめん、ね」
そう聞こえて、すぐに首もとに鈍い痛みが広がった。
「……っ!」
少し、痛い…
でも、圭太はこんな痛みより、ずっと苦しかったと思う。
だから、我慢しなくちゃ…
血をすする音と…
喉の音耳に焼き尽く。
そういえば、私ってこんな風に血を飲んだことってないな…
いつも、隼人の家族のおかげで飢えっていうものも体験したことないし……。
苦しんだ…
私は幸せなんだ……
そう思っていると、圭太がそっと顔を話した。
口元は血で汚れていた。
普通の人なら怖いって思うのかもしれないけど…
私は、
綺麗だと
思った。