「だ、ダメだよ! 苦しいんでしょ?!」


私は止めようとした。


だけど、彼は一歩、また一歩と部屋にある扉に向かってあるいていた。


「お願い、いうこと聞いて!」


私は彼の前に立ちふさがった。


「ど、いて…ハァハァ…くだ、さい……」
「嫌だっ」


それでも彼は前へ進もうとしたから、少し手を伸ばした。


ーーーーバタンっ


すると、バランスを崩して押し倒すような形で倒れてしまった。


「あ、ごめんなさいっ」


とっさに出てきた謝罪の言葉は敬語になってしまった。


うわぁん…
やっちゃったよ?!
大丈夫かなっ?!
弱ってるのに、倒れちゃったよ?!
いや、私が押したんだけど……


「本当にごめんね」
「だい、じょうぶ、だよ」


私はそう言った彼の上から動けなかった。


押し倒しといて、どかないなんてひどいかもしれないけど…
ここで、どいてしまったら……


そう思うと、どいてあげることなんてできなかった。