「お願い、教えて?」
そう、優しい声で告げると、よりいっそう強く抱きしめられた。
何かにおびえているのかもしれない……
「お願い…?」
なんとなく、察しながらも私はそう言った。
「嫌です……」
「どうして?」
彼の体は震えているようだった。
「何か、怖いことでもあるの?」
「お願いだから、聞かないで…」
弱々しい声でそう返ってきた。
でも、私はこういった。
「どうしても、聞きたいの」
そして、ギュッと抱きしめ返した。
「大丈夫、だよ。何も怖くないよ」
呪文のような言葉だと自分で思った。
そんな言葉で、変わるはずがないんだけど…
でも、変わったような感覚に陥ってしまう。
そんなことを考え始めたとき、
「わかった…」
この距離だからかろうじて聞き取れる、そう言った声で私にそう言った。
「話す、よ…」
その言葉には意志を感じた。