【風】


街の匂いは
変わってないよ


きみがいたころと同じ


だからわたし
胸の奥まで
身体中に
街の空気を吸い込むと


きみを思い出しちゃうんだ


もう

すごく切なくなっちゃって


心臓に針が刺さるほどの痛みで


そっと瞳とじて
涙流れるのとめるよ


すると瞼(まぶた)の裏に
きみはあらわれ


「よっ」


オッサンみたいな声で
片手あげて
太陽みたいに笑うの


風が運ぶ
痛み
思い出
そして



でもこういう気持ち
何だか嫌いじゃないわ


boui