『こうちゃーん!こうちゃーん!みてみて!』

『なぁにー?』

『キレイでしょー?この貝殻。こっちはこうちゃんにあげるよ』

『いいの!?ちぃちゃんありがとう!これは2人の宝物だよ』

『うん!大事にしなきゃね!』

―――――夢?あれは…こうちゃん?光輝?

「穂…千穂…千穂!」
…!?
「わぁ!悠星!どっ…どうしたの!?」
「どうしたの!?じゃねぇよ。今日始業式だろ」
「え?あ!やば!寝坊した!」
まだすっかり春休み気分で浮かれていた私は、新学期前に寝坊をしてしまったのだ。その日の朝、目が覚めると悠星のドアップがあった。
「聞いてる?支度。早くして」
「わっ分かった!すぐするね!」
「下で待ってる」
「うん!」

そう。今日から中学3年生。…なのに新学期早々寝坊だなんて…。私って本当ドジ?

そういえばさっきの夢…こうちゃん…かぁ…どうしてるかなぁ…。

私、桜井千穂は保育園から小学校まで幼なじみだったこうちゃんがずっと好きだったんだ。家も隣同士で毎日のように遊んでいた。けれどそんな2人が突然離ればなれになってしまったのは小学校5年生の頃。こうちゃんのお父さんが急な海外転勤で家族で海外に引っ越さなければならなかった。私は突然の事で何がなんだか分からなくて引っ越し当日も当日前一週間丸々泣き腫らしてこうちゃんに別れを告げた。
今思えばあの時伝えるべきだったのかもしれない。
「行ってきまーす」
ガチャン
「ごめんね。遅刻しちゃうね」
「いつものこと」
嫌みったらしく言ってくる悠星に膨れっ面をしながら朝の事を思いだし堪忍した。
「そんな顔してるくらいならさっさと歩け」
「はーい」