「…………あ、さ…がき?」


「………っ、うごかないで……」


――腰、痛いから。


そう言った雛乃は、首に回した手に力をこめた。


「………大丈夫だよ。志島君は、今此処に居るんだから。」



……どく、ん


―――心臓が、止まるかと思った。


俺の過去も、今のあやふやな精神も、彼女は知らない筈なのに。


包み込むみたいに、俺を慰めた。










―――彼女に惹かれたのは、何時からか。


その優しい香りに、俺は吸い寄せられるみたいに、


(……暖かい。)


温もりを、求めて。




雛乃に何と無く特別な感情を抱いたのは、多分この時。