ふざけた雰囲気が、張り詰めた緊張感に変わる、瞬間。


志島君のピリピリとした空気は、回りに伝染するみたいに広がり、けれどもそれに気付く者は無い。



ゆっくりゆっくり、私達に近づいて来た志島君は、私の前で足を止めると、そっとベンチのひじ掛けに手をついた。


「………か、の…――――」


消えそうな位小さな声で、誰かを呼んだ。


ただただ動けない私の頬に、志島君が手を添える。


ゆっくりと近づく、悲しげな瞳。


「……な、に……を、」



私の声が震えた。


目の前の、悲しげなひとに、共鳴するみたいに。