よく通る、優しく透明な声。


視線を上げれば、30m程先に、撮影用の制服を着た志島君が立っていた。


「………何、してんの」


"これないよって、いったのに。"



呟くように紡がれたその言葉は、私の耳に、空気を伝って流れ込む。


驚きと、何故か少しの怯えを孕むその声色に、違和感を感じずにはいられない。



だって、瞳が。


志島君の瞳が、何かを恐れてる。


まるで、沸き上がる痛みを必死で表に出さないように……、誰にも知られないように、警戒するみたいに。