時計の針は今、9時過ぎを指していた。


確か、撮影開始は10時って言ってたっけ。


寝ぼけた頭でぼんやりと考えていると、水哉兄ちゃんよりも幾分か低い声が私の耳に響く。


「……おぅ、ヒナ。どうした?」


眠そうな眼を擦って欠伸をしながら、私の肩に顎を載せた彼は、私が手にする台本を見て、顔を顰めた。


「……それ水陽の、」


「台本だよ。忘れてっちゃったみたいだね。」



ため息を吐くと、彼―――次男、麻垣 水浪(みなみ)は、私から離れて頭をがしがしと掻く。