あんな風に、傷付いても、清廉でいられたら。


……どんなによかったのだろう。

けれど、私がそれを願うには遅すぎたのかな。


でも、今からでも、早紀さんに近づきたい。


透明で綺麗な空気を纏って、優しい笑顔で皆を癒せたら。



そんな、私が憧れる人に惚れられた、九条。


「でも、私は今、九条より早紀さんが好きだなっ」



定まったのは、目標。


彼女に、近づきたい。


「……そう言うと思った。」


顔を上げれば、志島君が笑ってた。

困ったような、笑顔。


「………戻るか。」


「うんっ」


志島君が何を言おうとしたのか。


私はわからなかったけど。




パタパタと響いた、二人の足音。


繋いだ指から伝わる体温は、思ったよりも低いんだと、なんだか感心してしまった。


……二人の目が合って、笑い合える。


それだけで、私は幸せなんだって、気付いてた?