「……まだ、何にもわかんない。」


恋愛経験は、殆どゼロに近いのだ。


それがどんな感情なのか、私は知らない。


そして、今まで私の目に晒された沢山の、溺れと狂気を孕んだ恋する女の瞳。


だからこそ、わからないし知りたくなかった。


惚れた腫れたなんて、最も遠ざけていた感情なんだから。


……でもさ。


「……早紀さんみたいに、恋すればキレイになれるのかな。」



彼女を見て、私の中に芽生えたものは、憧れ。


遠ざけていた筈の憧憬が頭を離れなくて。


「九条にそんな感情を持ってるか、なんて今はわかんない。でも、早紀さんが惚れる位なんだから、九条もイイヤツなのかな、とかは思っちゃうな。」