「麻垣が、そうさせるんだ。」


静かな声。


遠くを見て呟いたような、そんな声色だった。


「どういう、意味。」



「そのまんま。」


目も合わせないで、坦々と過ぎていく会話。


私と彼のどちらからでもなく、手が触れ合った。


互いの指先で相手を弄び、触れて、離れてまた触れて。


まるで、恋人同士がする舌先の触れ合いみたいだと、心の何処かで思ってしまう。



「……好きなのか?」


変わらずに目を合わせないで、唐突に問われた。


一瞬、何の事だかわからなくなる。



「あいつの……、こと。」


あいつ…、あぁ、九条か。


絡まる指はそのままに、上を見上げれば志島君が複雑そうな、何とも言えない表情をしていた。