「志島君のこと、知りたいよ。」


ぼそりと発せられた声は、消える前に志島君の耳に届いたらしい。


目の前の瞳が、怪訝そうに揺らめく。


畳についた拳を握りしめて、私はなおも喋り続けた。


今度は、志島君の目を見つめて。


「お願い、私は志島君の事が知りたいよ。そんな辛そうにしてるの見てたくないもん。私ができる事、何だってするから、だから……! 私に、あなたの陰を、教えて。」




一息で吐き出した私の想いは、志島君を俯かせた。


そして、その志島君から言葉が漏れる。



「……知って、どうするの。何でもって何だよ、お前に何かが変えられるのかよ!」