「なるほど、さすがに馬鹿力か。」
 どう見ても余裕があるような状況じゃない。なのに、彼の落ち着きぶりは何なのか。
 ふぅ、と1つため息をつくと、そこから目を疑う一瞬の出来事。
 気付いた時には、教室の壁にぶつかり、ぼしゅっ、と音を立てて消滅するその悪魔の姿があった。
「うそ…」
 あの瞬間、スッと前に動いた志之居君の足が上がり、蹴ると悪魔の身体はノーバウンドで壁へと直行し、そこへ重たそうなパンチを当てて飛び退いた志之居君の姿。
「まだいるのか、ったく…」
 腰に手を当ててつぶやく志之居君は息も上がらずドアの外を見ていた。