「お母さんと一緒に、家で手作りケーキの飾り付けをしながら、お父さんの帰りを待ってたの。
その頃まだおじいちゃん達とは一緒に暮らしてなかったから、家には二人だけでさ。
ケーキが出来上がって、お母さんがボウルとかを片づけてたらね、急に倒れたの。
痛いとか、苦しいとか、そんな感じは何もなかった。
ただいきなり崩れるように、あたしに寄りかかってきたんだ。
最初はふざけてるのかと思った。
でもね、支えきれなくて床へ一緒に倒れた時、どうしようって……。
お母さん、全然意識がなかったんだ。
あたし、もうパニックになっちゃって、何回もお母さんを呼んだんだけど、返事がなくて。
それでやっと、救急車を呼ばなきゃダメだって。
119番なんてかけたことないし、ただもう、お母さんが倒れたとしか言えなかった。
住所もちゃんと言えたかどうか覚えてないよ」