集落の最奥にある小屋に、女王は住む。
他の雪女に案内され、招き入れられる。
「どうぞ、上がってください」
中には女王がすでに待っていた。
銀色の髪に白い肌。白い着物。白一色の中で瞳だけは蒼い。
他の雪女よりも一層、白に近い彩り。
雪そのものだ。
「お茶とお菓子はありませんが、ゆっくり、お話しましょう」
「恐縮です」
座敷へ上がる。そして彼女の前に座った。
向かい合えば、彼女からにじみ出る妖気が肌で鮮明に感じ取れた。
氷のように冷たく、身を刺すような気迫。
ただ彼女は穏やかに座っているだけなのに、その強大な妖気にすずめは呑まれた。
「あ、え……う……」
うろたえている。気迫に圧され、正座のかたちを崩す。
瞳には恐怖。女王と呼ばれる雪女の妖気を恐れていた。
「怯むな、すずめ」
冬矢は平然だった。
呑まれることもなく、女王を見据えていた。
「ご、ごめん……なさい」
「別にいい。女王も、彼女で遊ぶのはおやめ下さい」
じっと、彼は女王を睨みつける。
女王はクスリと笑った。そしてすずめを圧していた妖気が引っ込んだ。
「あら、ごめんなさい」
「……単刀直入に言わせていただきます」
ようやく話せる空気となった。
冬矢は女王をまっすぐ、見据えている。その視線は鋭く、そして敵意はない。
ただ、見据えている。敵意も恐れも悪意もない、まっすぐすぎる視線だった。
「傘下に入ってください」
「!」
出てきた言葉はあまりに唐突で、
あまりに失礼な言葉だった。