宴も佳境に差し掛かり、締めくくりは二代目の言葉。
程よく酒も入った冬矢は二代目の言葉を今か今かと待つ妖怪たちの前に立つ。


「俺は百鬼夜行の主となった。この日が来るのを俺はずっと待っていた」


宴で盛り上がっていた空気もじっと冬矢の言葉だけが響く。
二代目がこれからの百鬼の方向を示してくれる。二代目の言葉だけを待っていた。


「俺には果たしたい目的がある」

そして冬矢は言った。


「山妖怪と手を組み、町妖怪と山妖怪の百鬼夜行を統合させる。阿弥樫町の統一だ」


ピン、と妖怪たちは張りつめた空気を出す。そしてざわつく。
本当にそれが可能なのかという疑い、もしそれが実現できたらという希望、
そして冬矢なら実現することができるかもしれないという信頼。


いろんな感情でどよめくが、それは冬矢の咳払いでおさまる。


「阿弥樫町は妖怪にとってこの上なく魅力的な町だ。その町を守るためには町だ山だと争う暇などない。一つに結束すべきだ」

彼の言う事は確かだ。
阿弥樫町は妖怪が住むにはとても都合がいいのだ。自然に囲まれていながら、人が多い。
人の感情を力に変える。自然の脅威が力になる。


「……でも、できるんですか?」

一人の妖怪が恐る恐る聞いた。
冬矢はにやりと笑う。

「俺を誰だと思ってる。お前らは信じて俺に続け」

彼の言葉は力強い。
有無を言わさず、妖怪を惹きつけてしまう。


こうして、阿弥樫町の雪代 冬矢率いる百鬼夜行は阿弥樫町統一を目標に掲げた。