家に帰ると、慌ただしくお母さんにただいまを告げ、自分の部屋へと2階に駆けあがった。

心臓がどくどくと脈打っているのは、全力で階段を上ったからだけではない。

ベッドの端に腰かけ、ドアをきちんと閉めたことを確認すると、紙を取り出した。

「なんだろ…」

その紙を渡された瞬間から渦巻いている疑問を口に出してみた。

透視できるわけでもないけれど、手のひらにある折りたたまれた紙をじっと見つめる。

―どうやらノートを破ったものらしい。

端のほうがぎざぎざしていて、ところどころ派手に破れていた。

私と同じ。
ノート破るの、苦手なんだ―。

そう思うと、笑みがこぼれた。

ゆっくりと紙を開いてゆく。

そこには、お世辞にも上手とはいえない字で―けれど丁寧に書いたことは伝わってきた―こんなことが書いてあった。

「突然すいません。
もしよかったら、俺とメールしてください。」

そして、その短いメッセージの下には小林くんのアドレス。

いちばん下には「小林宏治」と記されていた。

「小林宏治…くん」

声に出して呟きながら、なぜか頬が赤く染まる。

私は、胸が高鳴るのを感じていた。