電話を切ったあとも,私はしばらくそのままの姿勢でぼんやりしていた。
宏治が暗かったなんて…。
ふと,宏治の涙を思い出した。
まだ間に合うのだろうか。
宏治も今…私と同じ気持ちで苦しいの…?
そんな考えばかりが頭をよぎる。

と,再び電話がかかってきた。
和哉が何かいい忘れたのだろうかと思いながら携帯を見た私は,心臓が一瞬止まったような気がした。
─"小林宏治"。