「…何かって,例えば?」
しばらくしてから抑揚のない声で尋ねると,和哉はいいよどんだ。
「いやー…よくわかんねぇけど。ただ,俺今日,親が迎えに来るまでサッカー部の練習見に行ったんだけどさ。そのとき宏治の様子がおかしかったんだよな。」
私は放課後のやりとりを思い出して,溢れ出しそうな涙をこらえながら正直に言った。
「そっか…。うん,私のせいな気もする。」
「やっぱりか…つぅかお前ら最近ケンカでもした?みんな噂してんぞ―放課後東階段で見かけないって。」
「ん…今日で完全に関係切ったよ。」
私は泣きそうなことを悟られないよう,努めて冷静に答えた。
当然和哉は電話の向こうで相当驚き,私はクリスマスの出来事を詳しく話さなければならなかった。
和哉は黙って聞いていたが,全てを聞いてしばらくした後,ゆっくりと口を開いた。
「お前本当にそれでいいの?てかそれってお互い納得してねんじゃん。」
「なんで?納得ならした…」
形だけの反論をする私を和哉が遮った。
「今日の宏治の様子からするとあいつもふっきれてねぇし,お前だってふっきれてねぇだろ?」
返す言葉が見つからずに私は黙った。それが本当のことだったから。
今でも宏治のことを,こんなに想っているから…。