けれど,宏治のことを考えると涙が出た。まるで手で鷲掴みにされたような痛みが,胸に走った。
放課後は東階段に向かってしまう自分,夜は勉強もせずに携帯を見つめてメールを待ち続ける自分─あらぬ期待を抱く自分自身を,どれだけばかだと思っただろう。
けれど私はどうしてもそれをやめることができなかった。

このままじゃだめだ。
ある日私は気がついた。受験まで時間がないのに,ろくに勉強もできていない。
宏治のこと,ちゃんとけりをつけなくちゃ…。

そう思い立ち,私はその勢いが消えないうちに宏治にメールを送った。…もちろん,アドレスは消せていなかったのだ。

「明日の放課後に会ってほしい。最後に1回だけ,私に会って」
宏治からの返事はすぐにきた。
「いいよ。前みたいに,放課後東階段に行けばいいんだろ。…絶対行くから」