「彩夏〜?ここわかんないんだけど!なんでこうなるわけ!?!」
数学後の休み時間に一人ぼんやりしていると,志甫がノートを持ってやってきたので,私は顔をしかめた。
「だから数学は苦手なんだってば!ほら,拒否反応で湿疹が!!!」
私が大袈裟に腕をかくと志甫はげらげらと笑って私を殴るふりをした。
「またまたぁー」
私も笑った。

はじめは志甫も罪悪感を感じていたのだと思う。冬休みの間も毎日頻繁にメールをくれたことがその証拠だ。
けれども私は「もうふっきれた」という態度を取り続けた。普通に冗談をいい,普通に生活する。
そのうち志甫も,そんな私の態度にだまされたのかそれとも気を遣ってくれたのか,変に優しく接するのをやめてくれた。おかげで私はやっと,一人でじっくりと宏治について考える時間ができた。