「じゃあ,俺との約束と友達,どっちが大事?」
宏治がまた質問した。
「ごめん,宏治。でも私はどうしても志甫のほうを選ばなくちゃいけなかったの…」
そう,今でも私はなぜここで話すのをやめなかったのだろう,と思う時がある。このあと私が言った言葉は,言うべきではなかった―なにしろそれは,最悪の結果を招いたのだから。
私はまつげについた雪をまばたきで振り払うと口を開いた。
「私は…恋愛と友情だったら絶対に友情をとる。恋はいつか必ず終わるけど,友情は一生だから…一瞬の恋のためだけに友達失うなんて,ありえないと思う。」
おそろしい沈黙。
私はいった後で激しく後悔していた。私が言ったことは紛れもなく本心だった。本当にそう思っていた―宏治に,出逢うまでは。宏治に出逢ってからは…もしかしたら一生ものの恋もあるのかもしれないと思い始めていた。宏治への私の想いはそれほどに強く,大きかったのに。
それなのに…なんで?なんでこんなこと言ってしまったのだろう?