私が説明しているあいだ,宏治は何も言わなかった。
相づちすら,うたなかった。
「ごめん,今すぐ行くから。だからあと少し…」
「なんで?」
私の言葉は,宏治の低い声に遮られた。その声の調子に,私はぴたりと口をつぐんでぎゅっと目を閉じた。
─怒ってる。ううん,そんなもんじゃ済まないかも…。
「俺と会うより…友達のほうが大事だったってことだよな?」
そこで一旦黙ったが,私が答えなかったためか,宏治は私がいちばんしてほしくなかった質問をはっきりと口にした。
「彩夏はさ…俺と友達,どっちが大事?」
私はしばらく何も言えなかったが,やがてかすれた声で答えた。
「そんなの比べるなんて,間違ってるよ…。」
宏治は黙り込んだ。その十数秒の間,私はなんて最悪なクリスマスなのだろう,とぼんやり思っていた。