「辛いだろうけど…でも…雄平君のこと,恨んじゃだめだよ?」
そこで曇り空を見上げて冷たい空気を吸うと,先を続けた。
「だって,本気で好きだった人なんだから。1年とちょっとの間,雄平君は志甫のことが大好きで,志甫は雄平君のことが大好きだった。志甫の雄平君への想いは,本物だったよね?雄平君も…志甫にたくさんたくさん,いい想い出くれたでしょ?だからむしろ感謝しなきゃいけないんだと思う。志甫は,中学時代の半分を,大好きな人と過ごせたんだから。」
志甫の涙はまだ止まらないようだったけれど,一度だけ大きくうなずくと,ごしごしと涙を拭い,泣きながらも私に笑顔を見せた。
その笑顔は,なんだか大丈夫そうで―うまく言えないけど…まるでお天気雨のような…雨雲をわってあったかい陽光が照らしているような笑顔で,志甫ならきっと失恋もばねにできる,と私はそっと微笑んだ。