クリスマス当日─。宏治とは映画館と大型ショッピングモールをつなぐ連絡通路で午後3時に待ち合わせていた。
3時というのは少し遅めだったが,こんな日にさえサッカー部が部活をやるというのだから仕方がない。
「キャプテンは…伸浩サンっていうんだけどさー…ほとんどの部員が彼女持ちなの知ってて部活やるっていうんだよ!自分が最近彼女と別れたからって…他の部員にとばっちりくらわせるなっつの!」
と,宏治が鼻息荒く言っていたのを思い出す。
2時半,私は映画館行きのバスに乗るためにバス停にいた。空は白っぽい灰色の雲に覆われていて,私は出かける直前に「6時くらいから雪らしいから,帰りは気をつけなさいよ」とお母さんに言われたことを思い出した。
もうすぐ宏治に会える。
バスを待ちながらそう思うと,すごく嬉しいのと同時に,胃をぎゅっとつかまれるような緊張も感じた。まるで,初めて放課後に宏治と話した日のようだ。
あと3分ほどでバスが来るだろう,と私が思ったちょうどその時,携帯が鳴った。
私は最初,宏治からの電話かと思ったが,表示されている名前を見て一瞬首をかしげた。
え?志甫から…?
今頃は雄平君と会っているはずなのに,と不審に思いながらも電話に出た。