私はため息をつくと、まだおかしな所を見つめたままの宏治の視界に入るように、すっと移動した。

「とぼけたってバレバレなんだからね?何かあったの?」

また再び宏治の目が宙を泳がないように、巧みにその視線をとらえて同じ質問を繰り返した。

「な…何もねえよ」

―どもってる時点で何もないわけない。

いい加減にしなよ、と宏治を説教しようとした時、宏治が言葉を続けた。

「でも!」

「話が、ある」

一瞬、胸が大きく脈打ち、私の頭が忙しく動き出した。

遂に―待ちに待った告白か。
それとも、もしかして別れ話?
ううん、でもそもそも付き合ってないんだからそんなわけ―

「彩夏」

宏治の声に、突然自分1人の世界から引き戻された。

今度は私の視線が宙を泳ぎそうになったけど、相当な気力を使って宏治の目を見つめる。

いつ見たって、宏治の瞳は、綺麗だ。

「彩夏…クリスマスって日曜だろ?その日を…俺に、くれる?」

クリスマスを―宏治と?

「…うん」

私は小さな声で返事をした。

クリスマスまで、あと10日―。