「まず第一に、見知らぬ女の先輩を友達相手に選ぶ1年なんていると思うか?」

「…普通いないと思う」

「"普通"っていうか、まずいない」

私の言葉を即座に正す和哉。

「宏治も奥手なんだよ。だって考えてみ?1年前はまだ小学生だったんだから―告るとか付き合うとかってそんななかっただろーさ」

「うん、それで?」

和哉の言葉をじっくりと吟味しつつ、先を促す。

「だから、やり方とかわかんねーんじゃねってこと。どのくらいのペースで持ってくかとかね」

あっさり納得のいくことを言ってのけた和哉を、私は穴があくほどじっと見つめた。

「…ずいぶん慣れてるみたいじゃない、和哉は」

手に持っていたシャーペンを鮮やかに回し、和哉はサッカー部特有の爽やかさをにじませてハハッと笑った。

「まーな?俺に任せろってこと」

まったく、調子にのらせるとろくなこと言わない奴だ、とか思いながらも、和哉のカウンセリング―と冗談めいた響きも込めて呼ばせてもらうが―で希望が持てたのは事実だ。

「ありがと!」

心から素直にお礼を言うと、私は鞄を持ってしっかりとマフラーを巻くと、教室をあとにした。