「―はい?」

私は一応返事はしたものの、疑問符をつけずにはいられなかった。

そこにいたのはクラスメートでもなく、顔見知りでもなく―

上靴に入っている緑色のラインからして、1年生だったからだ。

だけど―
1年生にしては大人びて落ち着いた感じの子だ。
背も高い。

きっとそのせいだろう。
私が他の1年生に対して感じていた幼さは、ほとんど見られなかった。

それから私は、視線をネームへとすべらせる。

―「小林」。
小林くん、かあ…。

「突然すいません。でも、これ―受け取ってくれませんか?」

外見の印象と同じ、落ち着いた声で話し始めた小林くんが差し出したのは―

折りたたんだ、白い紙。

私はちょっと紙を眺めた後、ゆっくりと手を伸ばしてその紙を受け取った。

「あの、これ私に?」

まじまじと紙を見つめながら尋ねると、小林くんは短くうなずいてやけに早口で言った。

「できれば…家で見てください」

「ん…わかった」

戸惑いながらも返事をすると、小林くんはほっとしたようにうなずいた。

「ありがとうございます」

そして小林くんは、何だかひどく慌てた様子で引き返していった。