「彩夏は…小林のことどう思ってるの?」

不意に志甫が口を開いたと思ったら宏治の名前が出てきたので、私はぎょっとして志甫を見た。

「どうって…」

答えははっきり見えていたけれど、少し困って志甫の目をのぞき込んだ。

志甫はなんというか…賢い子だった。鋭いというか、わかるべきことはわかっているというか。
だから私は志甫の目を見た途端、親友の考えが手に取るようにわかった。

「…なーんだ」

ふふっと笑って、川に視線をやる。

「知ってんじゃん」

志甫も軽く微笑んで、静かな川に目をやった。

「当たり前でしょ。念のため…訊いてみただけ」

相手が親友といえどもやっぱり恥ずかしくて、とりあえずりんご飴を舐めた。
その甘さが口にしみる。

「私ね…本当に好きなの、宏治のこと」

唐突に口を開くと、志甫はゆっくりとうなずいた。

「うん。がんばってね?」

「わかってる」

短く答えたあと、なぜかわからないけどおかしくなって私は急に笑い出した。それにつられて志甫も腹をかかえて爆笑する。

いちゃついていたカップルたちは、何事だといわんばかりに迷惑そうに私と志甫を見たけれど関係ない。

祭りの夜はゆっくりと更けていった。