しかし、その心配はなかった。

私の顔の赤みがおさまっても、宏治は銅像か―あるいは石像にでもなったかのようにぴくりとも動かなかった。

その無駄な肉のない背中が規則正しく動いていることだけが、宏治は銅像にも石像にもなっていないことを教えてくれる。

「宏治…部活、始まってるでしょ?行かなきゃ…」

小さな声でそう言って、1ヶ月前に初めて話したときのようにそっと背中を押す。

宏治は―動かない。

私は困り果てて宏治の背中を見つめた。
どうすればいいのだろう?
そもそも宏治は、まだ怒っているのだろうか。
今、何を思っているのだろう。

私―もう一度、きちんと謝るべきなのかな?

「宏治―」

私が口を開いた、まさにそのとき。
ようやく宏治が動きを見せた。

首だけひねって、くるりと私を振り返ったのだ。