私は―というより、私たちは、しばらくそのまま佇んでいた。

宏治は宏治でわずかにうつむいたままだったし、私は私でエナメルバッグの肩ひもを掴んだままだった。

ぴくりとも動かない私たちはきっと、額縁の中にきれいにおさまった絵のようだっただろう。

先に我にかえったのは―私の方だった。

爪が柔らかな手のひらに食い込むほどきつく肩ひもを握り締めていたのだが、突然、この状況がたまらなく恥ずかしくなった。

つまり、自分の「淋しい」という発言。
それから、とっさに肩ひもを掴む行為。
まるで私がものすごく積極的な人みたいだ。

そんなことに思い至って赤面した私は、どうかこのタイミングで宏治が振り向きませんように、と心から祈った。
こんな顔、見られたくない。
きっと今の私の顔は、熟れすぎたトマトそっくりだろうから。