結構遠く―けれども表情を読み取れるほど近く―に、宏治がいた。

怒っているような、それでいて悲しそうな表情を浮かべて立ち止まっている。

「ごめん宏治!ぼーっとして…」

「俺といるの、つまんない?」

弁解し終わる前に、宏治が私をさえぎった。

「―そんなことないよ」

どうすればいいかわからなくて小さな声で答えたあとに、つけ加えた。

「どうして…?」

愚問だって、自分でもわかっていた。
けれど、この気持ちをどう言ったらいいのか、正直に伝えたらいいのか、わからなくて―。

涙が出そうになった。

「俺といてもつまんなさそうだから。話もきいてなかったみたいだし」

宏治がどことなく冷たくそう答えて、ふいと窓の外に目を移した。

おそらく、グラウンドで部活を始めた野球部を見ているのだろう。

いつもサッカー部と野球部はグラウンドを半分ずつ使っているが、ここからサッカー部の様子を見ることはできなかった。

が、野球部が練習を始めたということはそろそろサッカー部も始まるはず。