私に押されるままに階段をおりていきながら小林くんが尋ねる。

「今日もメールしていいですか?」

「もちろん!」

にっこり笑って答えた。

今日の私は笑ってばっかりだ。
でもそれは、小林くんの笑顔が私の緊張をといてくれたからだということは、言うまでもないだろう。

「じゃっ、俺行きますね!」

私の返事を聞き届けた小林くんはそう言って、階段の残りを一気に駆けおりた。

「あっ…ごめんねっ、部活あるのに時間引っ張っちゃって」

その背中に声をかけると、すでに階段の下にいた小林くんが私を見上げて―
またあの笑顔を見せた。

「俺が一緒にいたかっただけっすから。それから俺のこと、宏治って呼んでください!」

そこで一旦言葉を切ったが、小林くんは照れくさそうにつけ加えた。

「そっちの方が…うれしいんで」

そう言うと、恥ずかしさなのか部活に遅れそうだからなのかそれともその両方なのか、小林くんは全速力で廊下を走っていってしまった。

「…了解!」

遠ざかる慌ただしい足音を聞きながら、私は微笑んでいた。