小林くんとの約束の場所、東階段。

そこは、私たち3年生の教室のある2階端の階段で、いちばん近い教室は7組だった。

ほとんどの生徒が頻繁に利用する中央階段とは対照的な階段で、7組か―ぎりぎり6組の人くらいしか利用していない。

つまり、人気がないわけだ。

私はやけに丁寧に掃除をしていたものの、いつまでも引っ張るわけにはいかない。

小林くんはもう待っているかもしれないのだ。

緊張はピークに達していたが、心を決めて、行かなければ。

7組の教室から東階段まで、どんなにのろのろ歩いても十数秒で着くことは知っていた。
知っていたけれど、のろのろ歩く。

心の準備は、そう簡単にできるものじゃないんだから。

それからゆっくりと、東階段への角を曲がった。