その中には50万円入っていた
これはあたしのお年玉、17年間分だ
もちろん家出用の金
でも、今はひどく金が憎らしく思っていた
『ゴメン スクナイケド タマッタラマタオクル』
その金を投げてあたしはキャリーを片手に持ち、走って父が待つ車に飛び乗った
車が動き出す
後ろを向くと女は狂った様にさっきの金を道路に投げ捨てていた
『正美 大丈夫か?』
父に手を握られた瞬間、あたしの涙は止めどなく溢れた
まるで、氷にお湯をかけたみたいに一気にあたしの氷はとけていった
『正美… 父さんがいるからな』
父の笑顔はひどく暖かかった
でも、あたしの震えととけてしまった氷は止まらない