ベットに座って・・・

ぱらぱらマンガをめくっていても、
俺の目には何も映らない。

ミュージックプレイヤーを
大音量にして音楽聞いていても、
俺の耳には何も聞こえない。

イヤホンからもれる音楽が
部屋中に聞こえるくらい、
大音量なのに。

俺は、軟禁されていた。

部屋の外には刑事が張り付いている。

刑事っていっても
俺の兄貴なんだけど。

「鑑識からアメの成分分析の
結果が届くまで、
祥平君は部屋にいてもらいます。」

兄貴の上司の高原さんが、
母さんに事務的に告げていた。

「お世話をかけます・・・」

泣きはらした目を
かくすように伏せながら、
母さんは消え入りそうな声で
つぶやいていた。

俺には、どうしても
リアルに思えない現実が
ついさっき、
俺の部屋で起こったんだ。

“スイートドロップ”だの、
ドラッグだの、
そんなものは、
俺には何の関わりもない世界の
ものだって思っていた。