時々、
ことばにつまりながら話す一平に、
俺はなんて声かけたらいいんだ。

同じ子を好きになって、
本当はライバルなんだから、
一平がふられたことは、
俺にとっては
うれしいことのはずなんだけど、
そんな気持ちにはなれない。

「それより、
次は、お前の番だからな。

俺に
あれだけはっきり宣戦布告したんだ。

祥平、
お前の気持ち、
ちゃんと佐久本に伝えろよ。

でも、
俺は、お前の応援はできない。

さっき、お前、
俺に自分の心は俺への嫉妬で
ぐちゃぐちゃだって言ったよな。

今は、俺がそうだよ。

佐久本から
手紙もらったって聞いて、
ホントはお前を
殴りたいって思ってんだからな。」

一平は、ぱんっと俺の肩をこづいた。

「うん、わかってる。

一平・・・

すまない・・・。」

俺は、そう言うのが精一杯だった。

俺に沙南が好きだって言った時、
耳まで真っ赤になっていた
一平の気持ちを考えると、
マジでつらかった。

でも、
沙南だけは、ゆずれない。

わりぃ、一平。

ホントわるいと思ってるけど、
沙南だけは、
ゆずれないんだ。

俺は、
だまって一平にむかって頭を下げ続けた。